ブログ|流山市東初石・おおたかの森の歯医者|ここなつ歯科

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歯周病と全身疾患

2022年2月21日

お口の中の病気、特に歯周病は口の中だけにとどまらず全身に影響すると言われています。 

歯は固い硬組織が体の中と外を貫いている器官で、その硬組織と軟組織をつなぐのが歯肉(歯茎)です。歯肉と歯との間の溝を歯周ポケットといい、そこには常に細菌が常在しており、炎症を起こすと歯肉組織の断裂が起き、細菌が侵入してきます。その細菌が血流にのり、全身にまわって各臓器に定着すると全身疾患が引き起こされる場合があります。

細菌が体内に進入することを菌血症といいます。一過性の菌血症は、歯を抜く、歯石とりなどの歯科治療だけでなく、食事で噛むときや歯ブラシによっても引き起こされることが報告されています。

健康な方は、免疫機構により細菌は排除されますが、何らかの疾患をお持ちの方や、高齢な方は抵抗力が弱く、細菌を十分排除できない恐れがあります。

お口の中が不潔になると歯にプラーク(歯垢)が溜まり、歯茎に炎症が生じて腫れてきます。そのような状態で、食事や歯磨きを行うと口腔細菌が血管内に入り菌血症が生じます。抵抗力が低下している方は、敗血症に移行することもあります。血管内に入った口腔細菌が心内膜に付着・繁殖し、感染性心内膜炎が発症することも報告されています。亡くなった患者さんの心内膜の菌を培養して調べると約4割が口の中の細菌であったという報告があります。特に心臓病や免疫力の低下した方は、お口の中の環境整備に注意する必要があります。

歯周病は生活習慣病に大きく関係しています。動脈硬化の主な原因は、遺伝的要素、脂質異常症(高脂血症)、高血圧などと考えられていました。最近の研究では歯周病関連細菌や歯肉の炎症が血管内皮細胞を傷害して動脈硬化を悪化させるのではないかとも考えられています。

また、歯周病原菌の中には血小板の凝集機能をもっている物もあり、血小板がはがれ、血流に乗り血栓を引き起こし、動脈の梗塞を引き起こす可能性も考えられています。

歯肉の炎症自体が、糖尿病を悪化させる要因とも考えられています。炎症反応によって生じた毒素が毛細血管から血液中に入り込み、インスリンの機能を障害していると考えられています。一方、糖尿病で血糖コントロールがよくないと、感染に対する抵抗力が低下し、口腔の中の細菌が増殖しやすいことから、歯周病も悪化します。

その他、歯周病は妊婦に対して低体重児出産を促すことが報告されています。嚥下障害のある方は口腔内に細菌が多いとそれが肺に入り肺炎の原因となります。

このように、歯周病は全身の健康に大変関与しています。歯周病は日々の歯磨き、定期的なクリーニングで予防することが出来ます。また、歯周病に罹患した患者さんも適切な治療を行うことで改善が見られます。人生100年時代、歯周病予防・歯周病治療に力を入れましょう。